チーズ作りと出会った3つのきっかけ
丹波チーズ工房を始めて間もなく5年となります。
いま改めて振り返って、チーズ作りと出会ったきっかけについて、ちゃんと書いておこうと思います。
大変個人的な話となりますが、お付き合いいただければ嬉しいです(^^)/
ジャージー牛がやってきた
以前の記事でも少しお話しているのですが、
丹波婦木農場は、曾おじいちゃんの代から乳牛(ホルスタイン)を飼ってきました。
畑で牧草を作り、牛の乳を搾り、フンはまた畑の肥料として利用する
という循環型農業を家族で営んできたのです。
しかし今から10年ほど前、
当時酪農担当だったおじいちゃんのケガが引き金になり、
酪農の規模縮小が始まり、一時期はミルクの出荷すらしていなかったような状況でした。
そのころの私は20歳でした。
親の背中を見て農業をしようかなと考え、農業高校を経て、
埼玉県の有機農家さんへ住み込み研修に行っていました。
「すぐに実家に帰るのではなく、今は見聞を広めるべきだ」という親の勧めもあり、
有機農家さんの次に、お父さんの大学の先輩という縁で、
静岡県掛川市の柴田牧場さんへ研修に行きました。
ジャージー牛を飼い、ミルクは毎日自家処理して瓶詰めして販売したり、
ソフトクリームが人気のカフェを営業したりと、それはもう忙しい牧場さんでした。
そしてなんと!牧場での半年間の研修終わりに、ご主人の計らいで、
ジャージー子牛を2頭、婦木農場に分けていただくことになったのです( ゚Д゚)
子牛なので、子供を産むまでの約2年は乳搾りの仕事もありません。
「まぁ牛舎空いてるし、置いとくか~」くらいの軽いノリで婦木農場にやってくることになりました(笑)
将来的に乳搾りが始まったら、これまで通り地元の丹波乳業さんにお世話になるのは簡単なのですが、
せっかく珍しいジャージー牛が来たことで、私はいろいろな可能性を考え始めました。
この前まで、牛乳を自家処理して販売されている現場を実際に見ていたこともあり、
「ただミルクを今まで通り出荷するのではなく、何か自分で加工して販売できたら面白いのでは?」という思いが日に日に増していきました。
お父さんとお母さんの晩酌
柴田牧場さんの研修を終え、半年ほど実家の仕事を手伝っていたころ、
夜になると、お父さんとお母さんがテレビドラマを見ながら晩酌しているのを時々見ていました。
そんなある日の晩酌で、
夫婦でおしゃれにワインを飲んでるではありませんか(^^♪
ワインなんてほとんど飲んだことなかった私も、興味本位でその日は晩酌に加わりました。
すると、ワインのおつまみに6Pチーズを食べているのです。
チーズとワインは相性いいとは聞いていたけど…と、
チーズをかじって、ワインを口に含むとそのおいしさにビックリしました。
「おお!これか!( ゚Д゚)ウマー」
以前なら気にも留めなかったでしょうが、
その時の私は「これだ!( ゚Д゚)」と思いました。
チーズがどうやって作られるかは知らんけど、
ジャージー牛乳でチーズを作れたら面白いかも!と。
すこし大人っぽい食べ物への好奇心と、
お父さんお母さんの晩酌を自家製チーズでより豊かにしたい
という思いで、いよいよ私はチーズ工房について調べ始めました。
師匠との出会い
半年間の実家生活を経て、東京の日本農業経営大学校に入りました。
この学校は、将来の農業経営者を育てるという考えのもと、その年から始まった新設の学校でした。
その中で、夏の4か月間は「農家さんでの研修をする」というカリキュラムがありました。
どうせならチーズ工房さんに行けたらいいなーと思い、
ネットで調べてアポを取って、GWにいくつかの工房さんを回り、
そこで出会ったのがさらべつチーズ工房さんでした。
ネットにもあまり情報はなく、チーズが美味しいという書き込みがあった程度で、ほとんどわたしの勘だけで訪れました(笑)
20歳で、ヒッチハイクでやってきた生意気な私を、さらべつチーズ工房の野矢さんご夫婦は温かく迎えてくれました。
そこでいただいたチーズが美味しいこと美味しいこと( *´艸`)
今まで食べていたチーズとは比べ物にならないくらいの
濃厚な旨味と、芳醇な香りと、くちどけなんです( ゚Д゚)
す、すごいところに来てしまったのでは!!と直感しました。
そして熟成庫のチーズたちに、ただただ圧倒されました( ゚Д゚)スゲー
これがチーズ工房ってやつか!かっこいい!かっこよすぎる!
とテンションの上がった私は、そのまま夏の研修をさせていいただけないかとお願いし、了承を得たのでした✋
いま思い返すと、我ながらなんて厚かましいやつなんでしょう(笑)
そして6月から、勝手に延長して11月半ばまで、
野矢さんの本業である「大根」も手伝いながら、チーズ作りを学ばせていただきました。
野矢さん、いや、師匠には、
チーズ作りはもちろんですが、生き方を学ばせてもらったと思っています。
毎晩のようにワインを飲みながら、いろんな話をしました。
場所や規模は違えども、同じ農家としての感覚や考え方に強く共感し、
「婦木、うまいもんつくれ」と口を酸っぱくされていました。
そして、11月に東京の学校に戻るころには、
いつになるかはわからないけど、必ず将来、チーズ工房をやってやる!
師匠がびっくりするようなおいしいチーズを、我が家のジャージー牛で作るぞ!
と決意していました。
おわりに
チーズと出会い、チーズ作りをしたいと本気で考えるようになったきっかけの話、いかがだったでしょうか?
ジャージー牛、両親の晩酌、師匠との出会い、どれかひとつでも欠けたら、今にはつながっていなかっただろうなと思います。
あの時の私からすれば、チーズ工房を始めるには、もっともっと時間がかかると思っていたので、
現時点で丸4年もチーズ工房をやっていること自体が奇跡のようにも感じます(笑)
今まで自分が経験してきたことすべてを生かして、こうして毎日仕事ができているのは、ほんとにありがたいことです。
まだまだ師匠には追い付けていませんが、
これからもっともっとおいしいチーズを作って、
師匠やお父さん、お母さん、そして嫁さんや、
たくさんの応援してくださる方々が、
ほんのひと時でも、素敵な時間を過ごせるお手伝いが出来たらいいなと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
もしよければ販売ページのぞいてみてくださいね~✋
ラップサイレージの作り方
婦木農場ではジャージー牛を飼っています。
与えるエサは、輸入飼料だけではなく、
自分たちの田畑で作る「自給飼料」づくりにも取り組んでいます。
その理由は、以前の記事をご参照ください。
今回は、その自給飼料のひとつである
牧草の「ラップサイレージ」についてお話してみます。
サイレージとは
先日、YouTubeに動画を上げました。
全体像が良くわかりますので、まずはこちらをご覧ください!
サイレージとは、家畜飼料の一種で、トウモロコシや牧草を発酵させ、長期保存できるようにしたエサのことを言います。
簡単に言うと、牧草のお漬物ですね。
トウモロコシのサイレージは写真のような感じです( ゚Д゚)
サイレージができる仕組み
青草やトウモロコシなどを刈り取ってそのままおいておくと、様々な菌や微生物によって分解され、腐敗してしまいます。
しかし、サイレージとしてラップにくるんだりすることで、空気の無いところでも働ける(嫌気性)乳酸菌が活発になり、乳酸や酢酸が作り出されます。
これにより、腐敗菌などの活動が抑制され、作物は腐敗することなく、牛たちの喜ぶ餌として長期保存できるようになるのです(^^)/
ポイントはとにかく「空気に触れないよう密閉する」ということです。
下図のように作り方もいろいろあるのです。
北海道の牧場のイメージとして、牧場の隣に立つ塔のような建物を見たことはないでしょうか?
これはタワーサイロ(塔型サイロ)といい、トウモロコシなどの作物をサイレージとして保存しておく施設なんです。
管理が大変なので、今ではほとんど利用されていません。
サイレージの種類
たくさんありますが、大きく3種類ご紹介します。
①コーンサイレージ
トウモロコシのサイレージで、日本全国で利用されています。
婦木農場でも10年前までは、畑にデントコーンという飼料用トウモロコシを栽培し、夏のクソ暑い時期に、家族総出で刈り取り、細かく砕きながら、牛舎の横にあったサイロの中に詰め込んでいました。
細かいゴミや虫がいっぱいでるので、あまりいい思い出はありません(笑)
②牧草サイレージ
イネ科やマメ科の飼料用牧草を、ある程度の水分量に乾燥調製してサイレージを作ります。
婦木農場では昔からイタリアンライグラスというイネ科牧草を利用しています。
イタリアンは軟らかくて牛が食べやすいですし、再生能力も強く、年に最低2回は刈取りできます。雪が降らなければ、越冬して元気に育ってくれるという頼もしさもあります( *´艸`)
③飼料稲サイレージ(ホールクロップサイレージ)
稲作の転作作物として10年ほど前から急激に増えてきたのがこれです。
飼料稲をお米もついたまま丸ごとサイレージ化したものです。
婦木農場でもここ数年、試験的に利用しています。
専用の大型機械が必要で、業者さんにやっていただけるので作るのは楽なんですが、
エサをやるときには、なにしろデカいので一人では動かず、3人くらいで玉ころがしのように動かしています(笑)
ラップサイレージ作りのポイント
イタリアンライグラスのラップサイレージの解説です。ラップの色はグリーンやホワイトが主流です
5年ほど毎年作っている中で、作り方のポイントがかなりわかってきました。
大きく2つあります。
①水分量
牧草は、刈り取ってから機械で反転を繰り返して乾燥させていくのですが、
私の感覚的には「かなり乾燥したな~」というぐらいがちょうどいいです。
数字的には50%くらいでしょうか?握って水気を感じるのはちょっと水分高いかもしれません。
ラップして密閉すると、閉じ込められたわずかな水分で十分発酵が進むので、問題はありません。
以前、水分多め(70%くらい?)でラップしたところ、秋ごろにはラップの中で発酵が進み過ぎて、黒くて臭いサイレージになったことがあり、捨てるのも一苦労でした。
長期保存するなら「乾燥気味」のほうが長持ちします。
あと何より軽いです。婦木農場では手作業なので、水分たっぷりで重いサイレージは腰が痛くなるので嫌なんです(笑)
②保管場所
北海道などで作られる巨大なサイレージは問題ないと思いますが、婦木農場のような小さいサイレージは少しでも穴が開くと、一本丸ごと腐ってしまいます。
以前は野外で保管していたのですが、カラスにつつかれたり、雨風によって破れてしまったりということが頻発していたんです。
そこで、数年前から遮光ハウスの空きスペースに並べるようになりました。
夏の暑さは遮光ビニールと換気をしっかりすることによって何とかしのいでいます。
サイレージの仕組みを理解し、発酵しやすい環境づくりをする、という部分は、チーズ作りとも共通することですね(^^)/
おわりに
ラップサイレージの仕組みや作り方のポイントを、少しでも知っていただけましたでしょうか?
以前からチーズを作る人たちの間では、
「サイレージは、チーズ作りに悪影響があるからやめたほうがいい」
と言われることがあります。
何やらサイレージにつく酪酸菌が牛乳に入ると悪さをする、ということらしいです。
しかし私は、いいサイレージを作れば、いい菌が優勢になって、
悪いことをする菌は働けなくなると考えています。
チーズも同じで、乳酸菌がしっかり働けば、㏗もしっかり下がって、
悪い菌が働けなくなり、熟成期間もいい菌が優位になり、おいしくなるんです。
現に当工房では、酪酸菌でチーズが腐ったりしたこともありません。
ぜひ実際のサイレージの匂いを嗅いでみて欲しいです。
人間でも「いい匂い」と思えるような甘い匂いがするんですよ!
牛たちが喜んで食べているのですから、間違いありません(^^)/
いいエサ作りは、美味しいチーズにつながっていると信じて、これからも頑張っていきます。
そんなチーズのネット通販をやっています。応援よろしくお願いします✋
チーズの作り方もYouTubeで公開していますよ~
マルチの効果と張り方
マルチって聞いたことありますか?
マルチタスクとかそんなアーバンな感じではなく、
マルチ商法とか怪しいやつではもちろんなく、もっと泥臭いほうです(笑)
現代日本農業、特に野菜生産には欠かせない資材なのです。
今回はマルチの効果と張り方について書いてみます。
マルチとは
農業用ポリエチレンフィルムのことです。
正式にはマルチングフィルムとかマルチシートとか呼ばれるみたいです。
うちではもっぱら「マルチ」って呼んでいます。
そもそも植物の株元や地表面をシートやワラなどで覆うことをマルチングといい、今ではポリフィルムが一般的なので、たいていこのフィルムのことをマルチって呼んでいます。
農協やホームセンターでも売っていて、
白やシルバー、透明など効果がそれぞれ違ったマルチが販売されていますが、
今回は主に、一番オーソドックスな黒色マルチの話をします。
大きな効果としては「雑草を防ぐ」ということなんですが、
実はそれ以外にもいろんな効果があるのです(^^♪
マルチの5つの効果
①雑草を防ぐ
これは見るからにわかりやすい効果ですね。
植物は光合成をすることで大きくなります。
光合成とは、水と二酸化炭素を材料に、☀太陽光パワーによってデンプン(糖)と酸素を作り出す働きのことです。
作物にしっかりと光を当てるために、周りをマルチし、太陽光を遮ることで、雑草の光合成を抑え、生えてこなくなるのです。
②地温を上げる
人間にも過ごしやすい気温があるように、作物にもそれぞれの生育適温があります。
マルチをかけることで、畑に太陽熱を取り込み、作物に適した地温に上げることができます。
この春時期に植え付ける夏野菜らは、25℃以上が必要と言われているので、
ちょっと肌寒い春でも、マルチを張ることで地温を上げ、作物は元気に根を伸ばすことができるのです。
さらに、地温が上がることで、畑の微生物たちが活発に働き、肥料や有機物を分解し、作物に栄養を与えることにも繋がります。
逆に、白色マルチを使うと、熱を反射し、地温が上がりにくくすることもできます。
夏季の高原葉物産地ではこのような光景が広がります。
③乾燥を防ぐ
いい畑の土は団粒構造になっています。
写真をご覧いただくとよくわかると思いますが、粒子がバラバラなのが単粒構造。
粒子がいくつか集まった集合体が団粒構造なのです。
団粒構造には、作物が根を伸ばすために必要な水分と空気が適度に含まれており、
マルチをかけることで、日照りによる水分蒸発や、大雨による土の硬化を防ぎ、作物に適した土の状態(団粒構造)を保つことができるのです。
④病気を防ぐ
植物は葉の裏面に「気孔」という空気穴を持っています。
雨が土に当たり、跳ね返りで葉の裏面に土が付くと、呼吸ができなくなったり、土に住む病原菌にやられてしまうことがあるのです。
マルチにより、土の跳ね返りを防ぐことで、作物の病気を予防する効果もあるのです。
⑤肥効を保つ
畑に与えた肥料は、主に団粒構造の土によって保持されています。
しかし、雨が続くと、土が肥料を抱えきれなくなり、畑から流されてしまうことがあります。
そこで、マルチを張り、雨による影響を受けにくくすることで、畑の肥料を保ち、無駄なく作物に栄養を与えることができるのです。
他にもこんなマルチが
透明マルチ
透明マルチは、太陽熱が最も入り、超高温になります。
その熱を利用し、作物を植える前に、畑表面の雑草の種を太陽熱で死滅させ、
作物の生育中に雑草を生えにくくするのによく使われます。
生分解性マルチ・紙マルチ
これは我が家の田んぼで使っている紙マルチです。
段ボール古紙で作られる紙マルチは、稲の発育初期の雑草を抑えることができます。
最初の2ヶ月抑えることができれば、あとは稲のほうが大きくなるので、雑草に負けることはないという、除草剤を使わない栽培の方法です。
2~3ヶ月で紙マルチは溶けてしまいます。
生分解性マルチは、植物樹脂やでんぷんから作られたマルチで、数ヶ月経つと畑の微生物によって分解されていきます。
マルチを剥がす手間も省力化できるのですが、どちらもちょっとお値段が高いです。
敷きわらマルチ
今でもスイカやカボチャなどには、敷きわらマルチをすることが多いです。
これは、収穫物が土に当たって傷が付いたり、高温になったマルチの上に転がって腐ったりすることを防ぎます。
トマト栽培などで、マルチが高温になりすぎないように敷くこともあります。
マルチの張り方
今やトラクターでもマルチを張れるようになっています。
婦木農場でも、今年から本格的に使い始めましたが、まだぎこちないです(笑)
しかし、機械では毎回新品のマルチを買って使わないといけないので、マルチを再利用するならどうしても手作業になります。
中山間地の高畝なので、参考になるかはわかりませんが、婦木農場のマルチの張り方をご紹介します。
①トラクターによってたてられた畝の両肩をクワで15㎝くらい削る
イメージ的にはこんな感じです(高畝に書きすぎた(笑))
② マルチを広げ、手で仮止めの土を置く
③削った土を元に戻す感じで、クワで土をのせ、マルチを抑える
畝の真ん中にも土をかけておくと風で飛ばされにくいです。
以上です。ちょっと手間ですが、ぜひやってみてください!
おわりに
今回はマルチについての話でした。
様々な効果があることを知っていただけたら嬉しいです( *´艸`)
今度畑を見るときは、ぜひマルチの種類や張り方に注目してみてください✋
私が18歳の頃研修していた有機農家さんでは、草マルチをしたことがあります。
これは、田んぼなどで刈り集めた雑草を、作物の周りに敷きわらみたいにマルチする方法です。
ポリフィルムの無い時代は、わらや雑草しかなかったので、みんなよくやっていたんでしょう。
すぐに乾燥してしまい、光を通してしまうので、抑草効果は少なかったですが、分解されると、そのまま畑の肥やしになるので、これはこれで理にかなっているなと感心したことを思い出しました。
ここ数年は牛や鶏、チーズばかりに関わってきたので、まだまだ畑については勉強不足ですが、このブログを書きながら私も学んでいきたいです!
私が働く丹波チーズ工房では、
畑の牧草作りから、お乳を搾り、ナチュラルチーズを作っています。
ぜひ応援よろしくお願いします(^^)/
野菜畑でも使う杭も手作りしています、ご覧ください⇩
チーズ工房を始めるには
丹波チーズ工房を始めて間もなく5年となります。
いまだに製造しているチーズは2種類で、
大した売り上げも上げられず、農場の不採算部門に…
という悲しき現状なんですが(´;ω;`)ウゥゥ
今回は新たにチーズ工房を始める方向けに、
私の体験談も交えながら、売り方とかではない部分で(笑)
ちょこっと参考になる記事を書いてみようと思います。
日本のチーズ工房は増えている
日本のチーズ工房は年々増えていて、
大小合わせて全国に300工房以上あるそうです。
2年前の情報ですが*1
やはり酪農大国北海道が断トツですね!
統計ではわからないですが、
チーズ工房の多くが酪農業も兼ねているのではないかと思っています。
丹波チーズ工房しかり。
毎日、目の前に牛乳があるわけですからね。
そしてこの表を見て分かるように、
日本人のチーズ消費量は年々増えています。
ですから今後もチーズ工房は少しづつ増える可能性があります。
私はチーズの師匠に出会って、いろいろ教えていただいたので、
チーズ工房を始める上で、一番大切なのは師匠を見つけることだと思っていますが、
私が実家の農場にチーズ工房を建てるとき、実際にやったことを紹介します。
保健所からの許可をとる
チーズ工房は、飲食店やお菓子屋さんのように、
保健所の許可があれば誰でも営業を始めることができます。
チーズを作る許可は「乳製品製造業許可」といい、小分類でチーズに限定されます。
ヨーグルトも「乳製品製造業許可」ですが、小分類でヨーグルトに限定されます。
つまり、ヨーグルトとチーズは施設を分けないといけません。実際やることはほとんど変わらないんですけどね(;´・ω・)
これらの許可は製造施設に出る許可なので、
【牛乳を受け入れて、殺菌して、チーズを作って、包装する】
という工程ができる施設を造ればよいのです。
ちなみに既に飲食店をされているところで、
訪れたお客さんに手作りチーズを出すのは「飲食店営業許可」の範囲で可能です。
それを購入してお持ち帰りするとなれば、「乳製品製造業許可」が必要となります。
まずはお住いの地域の保健所に行って、
「チーズ工房を始めたいんですが、どうしたらいいか教えてください」
と聞くと、担当の方が詳しく教えてくれるでしょう。
私もこれをやりました。
師匠のチーズ工房を参考に、自分で書いたおおまかな設計図を持っていって、
「これでやろうと思っています、どうでしょうか?」と相談しました。
確か、殺菌の方法を聞かれたり、水道の配置や製品のラベル表示について話があったと思います。こんな資料ももらいました。
設計図ができたら持ってくるようにとも言われ、
後日設計図を持っていき、施工前や完了後にも伺いました。
施工完了後、担当の方が工房に来られ、
事前に提出した設計図通り施工されているかを検査確認されます。
合格したら晴れて『乳製品製造業許可』がもらえます。
特段資格は必要ないのですが、後日、食品衛生責任者の講義も受けました。
工務店に設計・施工依頼する
工房の設計や施工は、以前からお世話になっている工務店さんに依頼しました。
チーズ工房を作るのは工務店さんとしても初めてだったようですが、
しっかり相談して、造っていただきました。
実際工房を使い始めてから
「あー!ココもうちょっと…」とかいろいろ思います、絶対(笑)
1つだけ書いてみると、
床には調理場とかでよく見るような緑のコーティングをしていたのですが、
私がケチったせいで、耐熱性があまりない安価なものだったので、
数ヶ月で一部コーティングが取れてきてしまいました。
お湯を使ったり、乳酸発酵により酸性のホエーも流れますし、塩素系洗剤も使いますからね…
一度製造を始めると床の塗装修理は後からやりづらいので、
最初にきっちりお金かけておくべきだったなと反省しています。また近いうちに修理したいです。
どういう構造にせよ、もちろん日々のそうじが大事ですけどね(^^)/
熟成庫を増設する
最初からゴーダチーズをつくるための設備は整えていたんですが、
肝心の熟成庫はつくっておらず、試作は玄米保冷庫を使って熟成させました。
試作ゴーダを食べて、お父さん銀行(笑)が首を縦に振ってくれたので、
いよいよ熟成庫の増設がスタートしました。工房を始めて2年が過ぎた頃でした。
以前の記事でも書きましたが、
熟成は温度変化のないところがいいので、
我が家の蔵の一階部分を改造しました。
師匠とも相談し、保健所とも相談し、工務店さんとも相談を重ねました。
乳製品製造業許可も再申請しました。
広さが40%以上(だったかな?)大きくなる場合は、
保健所に許可の再申請が必要になるようです。
リフォームみたいな感じなので、案外早く、
3ヶ月ほどで熟成庫と包装室兼資材置き場が完成し、
ゴーダチーズを作り始めることができました。
資金について
皆さん気になるお金についてですが、
恥ずかしい話、私はお父さん銀行を口説いて、
スネをかじり尽くしたので、借入はありませんでした。
製造室だけで車1台分はかかっていて、
その他設備にも最初からこだわって投資しました。
中古を探したり、DIYするなど、安くする方法は色々あると思います。
師匠もやっていたんですが、中古の保冷コンテナを改造する方法もあります。
探せば6次化補助金なども受けられると思います。
おわりに
チーズ工房を始めるイメージは少し伝わりましたでしょうか?
今回はあくまで私の場合の話でしたが、
作るチーズの種類によっても、工房の設備等は全然変わってきますので、
様々な工房に話を聴いたりして、よく調べてみてください。
実は中央酪農会議さんが、農家による乳製品製造の手引き書をつくっているのです。
興味のある方は、是非とも一読することをお勧めします✋
https://www.dairy.co.jp/archive/kulbvq000000c9hq.html ←ページに飛びます
私は、これまで4年間チーズ工房をやってきて
「手段が目的になっちゃってたなー」と反省しています。
とにかくチーズを作りたい!
という思いでチーズを作り始めたので、
作ることが目的化し、その先の売ることやお客さんに伝えることを疎かにしていたのではないかなと…。
もちろんその初期衝動は大切ですけどね。
今更ながら、ちゃんと伝えることもやらないと!と考え、
このブログを書いたり、新作チーズを試作したり、少しずつ動き始めています(^^)/
どうぞ応援よろしくお願いします!!!
最後までお読みいただき感謝します。
応援したいな!と少しでも思っていただいた方は、
是非とも通販サイトをご覧くださいませ!
床の補修もしたいのです!(笑)どうぞ宜しくお願いします✋
YouTubeも、ブログと同様頑張っています!
映像はやっぱり伝わる情報も多いですね。子牛は可愛い( *´艸`)
チャンネル登録もお願いします!
チーズを丸一年も熟成させる理由!苦みの原因も熟成にある!?
丹波チーズ工房では、
1年かけて熟成したゴーダチーズを作っています。
一般的にゴーダチーズは、
3~6ヶ月熟成が多いのですが、
なぜ当工房では12ヶ月もの長期間熟成をさせるのか。
ひとことで言うと、
「より美味しくなるから」という言葉に尽きるのですが、
今回はその美味しさの理由をお伝えしたいと思います。
熟成とは
チーズ作りにおける熟成とは、
それぞれのチーズに適した温度と湿度の熟成庫に、
それぞれのチーズに適した期間だけ保蔵し、
チーズ内部での乳酸菌やカビによる発酵を進めることです。
熟成する前のチーズは「グリーンチーズ」と呼ばれ、
塩味が付いただけの硬い組織で、風味も淡白ですが、
熟成が進むと、複雑な味わいや香りが生まれ、口当たりも滑らかになります。
チーズの種類 | チーズ名 | 熟成温度(℃) | 熟成湿度(%) | 熟成期間 |
---|---|---|---|---|
シェーブル |
サント・モール | 12~14 | 85~90 | 2~3週間 |
白カビ | カマンベール | 12~13 | 85~95 | 3~4週間 |
青カビ | ロックフォール | 8~10 | 90~95 | 3~4カ月 |
ウォッシュ | ポン・レヴェック | 8~10 | 85~90 | 5~8週間 |
リンバーガー | 10~16 | 90~95 | 2カ月 | |
セミハード | ゴーダ | 10~13 | 75~85 | 4~5カ月 |
ハード | グリュイエール | 15~20 | 90~95 | 6~10カ月 |
パルミジャーノ・レッジャーノ | 12~18 | 80~85 | 2年 |
熟成中、なにが起こっているのか
専門用語も多いので、太文字だけ読んでいただいても大丈夫です(笑)
①水分が蒸発して風味が増す
チーズはもともと牛乳なので、多くの水分(ホエー)を含んでいます。
出荷時の重量は減ってしまいますが、自然蒸発によって水分が抜けていきます。
出荷時での水分量は、パルミジャーノという一番硬いチーズで15%、ゴーダは40%、カマンベールは52%くらいになります。
水分が抜けることで、タンパク質などの成分割合が相対的に増え、風味が増していきます。
②カゼインが、ペプチドやアミノ酸に分解されることで、旨味と香りが作られ、組織も軟らかくなる
牛乳の主タンパク質であるカゼインが、
乳酸菌や凝乳酵素キモシン及び乳中のプラスミンなどの
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)により加水分解されていきます。
旨味成分のアミノ酸などもここで作られ、
アルデヒド、アミン、アンモニアなどの香り成分も生成します。
下の写真は当工房のゴーダチーズです。
内部に白い斑点のようなものが見えるでしょうか?
これは塩の結晶ではなく、アミノ酸(チロシン)の結晶なんです。
熟成が十分に進み、うまみ系アミノ酸がたくさん生成されていることの証拠です。
そして、熟成により食感も変わります。
出来立てのグリーンチーズは、カゼイン同士がしっかり手を結んでいるので、
食感がボロボロしていて硬いのですが、
分解が進むことで、カゼインの繋がりが弱まり、
トロッと舌の上でとろける組織に変わっていきます。
カマンベールチーズが、熟成するとトロッと軟らかくなる理由は、
白カビがカゼインを分解をしてくれているから、というわけですね。
③乳脂肪分が分解され、香りが作られる
乳脂肪は主にカビ由来のリパーゼという酵素により分解され、遊離脂肪酸が作られます。
その中には揮発性脂肪酸の酢酸やカプロン酸などが含まれ、
チーズの香り成分となります。
遊離脂肪酸が酸化すると、青かびチーズに特有の香り成分であるメチルケトンも生成します。
④乳糖が乳酸菌のエサになり、香りが作られる
乳糖が乳酸菌のエサとなり、乳酸やエタノール、炭酸ガスが出てきます。
乳酸からは、アルデヒド、アセトンなどの香り成分が生成され、
エタノールは発酵して微量のアルコールになり、
脂肪酸と結びついて香り成分である各種エステルとして、チーズの香りを作ります。
ある種の乳酸菌からは、クエン酸やジアセチル、酢酸も生成されます。
このように、チーズの風味や香りには様々な要素が複雑に絡み合っているのです。
チーズの苦みは必然!?
チーズを食べて「なんか苦いな」と思ったことはないですか?
実はそれ、熟成期間が短いことが原因で起こっていることかもしれません。
チーズの製造段階でのミスももちろん考えられるのですが、
先ほど説明したカゼインの分解物である「ペプチド」には、
苦みを感じる性質を持っているものが結構多いのです。
実は、私の作るゴーダチーズも苦い時があったんです。
先日、試作品の6ヶ月目のゴーダを食べてみると、
基本的においしいのですが、最後にわずかに舌に苦みが残りました。
「うわ!やべ!なんか失敗したかも!」
と急いで製造記録を確認したのですが、有力な情報はなく…(;´・ω・)
あーやばいなーと思いながらも、1ヶ月弱たったころ、
また食べてみるとその苦みは完全に消えていたんです。
びっくりして、文献を読み漁ったところ、
タンパク質がアミノ酸に分解される過程で作られる「ペプチド」には、
苦みを感じるものが多く、そこからさらに熟成(分解)が進めば、
アミノ酸となり、苦みを感じなくなるとのこと。*1
つまり、チーズの熟成が
今まさに目の前で進む過程を体感できたのでした( *´艸`)
どんどん熟成すすめ~✋
一応補足しておくと、チーズの苦みの原因は原料乳や製造工程のミスなども考えられますので、食べられないほどの苦みを感じたら、無理して食べる必要はないと思います。
熟成庫での仕事
実際、熟成庫では毎日どんな作業があるのでしょうか。
①温度と湿度の管理
当工房のゴーダチーズは温度12~13℃、湿度80~85%くらいです。
ヨーロッパでは、
外の環境の影響を受けにくいよう熟成庫を地下に作ることも多いため、
当工房では「蔵」に熟成庫を作ったのですが、
夏と冬では蔵の温度も変わるので、一年間一定に保つのはなかなか難しいです。
天気によっても湿度が大きく変わるので、注意が必要です。
毎日最低朝晩2回は確認して対応しています。
②チーズの反転、手入れ
チーズの熟成が均一に進むように、毎日上下ひっくり返します。
その際、乾いたタオルで表面を磨きます。
これは、表面に生えたカビや菌たちの繁殖を適切に抑え、
チーズの表皮(リンド)を作ることで、中のチーズをおいしく守る大切な作業です。
毎日拭いているだけで自然とリンドは出来上がっていきます。
本場オランダでは、この作業を軽減するため、
特殊なパラフィン(ワックスみたいなやつ)を使うのが一般的だそうです。
写真の赤いやつがパラフィン↓
パラフィンを使うと、水分の蒸発が進まないので、
リンドチーズよりは風味の濃厚さが劣るといわれています。
ただ最近では、いい感じに水分も抜けるよう加工されている
特殊なパラフィンみたいなやつがあるようです( ゚Д゚)マジデ~
つまり、当工房のやり方は、
100年前くらいのチーズの作り方なのかもしれませんね( ゚Д゚)/
熟成チーズの美味しさを✋
ちょっと専門用語も多く出てきましたが、
熟成によってチーズが美味しくなる仕組みを
少しでも知っていただけたら幸いです。
熟成した当工房の蔵熟成ゴーダチーズは、
コクのある香りと確かな旨味が口いっぱいにふわーっと広がり、
飲み込んだ後の余韻も楽しむことができます。
日々の暮らしの中で、一瞬でも肩の力を抜き、
「あ、おいしい」と笑顔になっていただけるよう、
心を込めて、日々試行錯誤しながら作っています。
今後とも応援よろしくお願いいたします✋
さて、丹波チーズ工房では、
送料無料のお得なチーズセットを通販しています。
私も牛さんも飛び跳ねて喜びますので、ぜひサイトをご覧ください!
YouTubeも随時更新しています!
いよいよ田んぼも始まってきました。健康第一で頑張ります!
*1:ある乳酸菌は、増殖して死滅した後にアミノペプチターゼという酵素を生成し、苦みペプチドを加水分解させるようです。乳酸菌スターターには、もともとその性質を持った乳酸菌を必ず用いるようです。
丹波チーズの食べ方🧀~嫁さんレシピvol.1~
毎日のように
あーだこーだと夫婦喧嘩をしています。
今さっきも「掃除機のかけ方が悪い」とか言われて…( ノД`)
まぁ、そんなことはありつつも(笑)
嫁さんは我が家のチーズを使っていろんな料理を作ってくれます。
今回は最近作ってくれた
「ささみチーズフライ」と「チーズ入りじゃがいも餅」
の嫁さんレシピを2つご紹介します。
ささみチーズフライ
元々はクックパッドのレシピなんだそうです。
https://cookpad.com/recipe/3543377
ゴーダチーズをカットする際に出た自家用チーズを贅沢に使いました。
材料(1人分)
- 鶏ささみ 2本
- 蔵熟成ゴーダチーズ 適宜
- マヨネーズ 適宜
- パン粉 適宜
- 塩コショウ 適宜
作り方
- 鶏ささみの筋を取り、開く
- 開いたささみに塩コショウして、細かく切ったゴーダチーズをのせ、もう一枚のささみで挟む
- 重ねたささみの上にマヨネーズを塗り、全体に広げる
- パン粉をしっかりつける
- 少し多めの油で焼き、きつね色になったら裏も焼いて、完成!
小麦粉をつけて、溶き卵つけて、パン粉つけて…
が面倒な時にマヨネーズを使うと楽チンなようです。
食べてびっくり!中からゴーダチーズが出てきました(^^)/
食べ応えのあるささみを噛むと、チーズの香りと濃厚な旨味がでてきます!
めっちゃおいしいやーん!ビールビール!🍺🍺
かなりボリュームもあったので、すぐおなか一杯に(笑)
嫁さーん、また作ってね✋
チーズ入りじゃがいも餅
こちらも元はクックパッド。
なんたって嫁さんはプレミアム会員ですから(笑)
https://cookpad.com/recipe/1244178
このレシピでやってみると、ちょっと粉っぽかったので、
嫁さんは我が家のジャージー牛乳を少し加えたようです( *´艸`)
材料(4個分)
- じゃが芋 2個(100g)
- 片栗粉 大さじ4
- 塩 小さじ½
- バター(又はマーガリン) 大さじ2
- 蔵熟成ゴーダチーズ 適量
- 牛乳 大さじ2½
作り方
- じゃが芋の皮をむき、竹串が通るくらいに茹でる
- すぐにマッシャーでつぶし、熱いうちに片栗粉と塩入れてこねる
- 少しずつ牛乳も加えて、粉っぽさがなくなるまでこね、4等分して、真ん中にチーズを入れて形を整える
- フライパンにバターを入れ、表2分、裏2分焼く
-
最後に蓋をして1分焼けば、完成!
バターのいい香り~♪
我が家のじゃが芋とチーズと牛乳も使って作ってくれました。
あ!食べてみると蔵熟成ゴーダの独特な香り!
表皮もそのまま入れてたんですね~(ちょっと茶色っぽいやつ)
香ばしくてイイ匂いがするので、加熱料理は表皮を残したままがお勧めです✋
じゃが芋もモチモチしていて、おやつにもなりそう。
おいしかったよ!ごちそうさまでした。
おわりに
嫁さんも、日に日に料理が上手になってきていて、
ほんとに頼もしい限りです。
こうやって記事を書いてみて、改めて感謝しないとなと思いました。
嫁さん、いつもありがとう(*´ω`*)
とは言いつつ、また明日も喧嘩してしまうのかも…(笑)
また嫁さんレシピvol.2も楽しみに待っててくださ~い!
こちらは贈答用に人気の家飲みセット(笑)
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先日、雨降り前にやった畑仕事を撮影してみました。
畦塗(あぜぬ)りの役割と先祖の思い
こんな時でも季節は変わっていくもので、
我が家にも例年通りツバメがやってきました。おかえり〜✋
近所の川沿いの桜並木も色づき始めています🌸
農場では田んぼが本格始動して、
トラクターで耕したり、草刈りをしたり、
お父さんが畦塗(あぜぬ)りもやってました。
写真で分かりますでしょうか?右が我が家の田んぼ。
土手を挟んで左は他所の田んぼですね。
土手にぺったり土を塗り固めているのがわかりますでしょうか?
今回は、この畦塗りの役割を書いてみようと思います。
畦塗りとは
畦塗りというのは、田んぼの土手の内側を土で塗り固めて、
水を田んぼに貯められるようにする作業のことです。
冬の間に、モグラやネズミが土手に穴をあけたりしているので、
そのままでは水漏れしてしまうのです。
田んぼというのは、「水田」とも呼ばれるように、
水を張ったプールのような場所で、稲を育てていきます。
畦塗りは、このプールの側面を土で塗り固めて、
水が漏れないようにしているのですね(^^)/
昔は鍬一本で手作業が当たり前でしたが、
今では「畦塗り機」という便利な機械がそれをやってくれます。
これはウチのやつ↓
こんな感じで使います(この写真は拾い画像です↓)
実は、この畦塗り機をかけただけでは、まだ不十分でして、
この後、田んぼに水を張って、トラクターで脇を何度も通り、
細かい泥で側面の細かい隙間を埋めていくことで、水漏れを防ぎます。
また、トラクターの入れない端っこのほうは、手作業でやることになります。
かなり難しそうなので、まだ私も畦塗り機は使ったことがないですが、
手作業はちょっとだけやったことあります。
あれを何百メートルもやるのはかなり過酷です…先祖リスペクトです(笑)
地域の違いと先祖の思い
畦塗りというのは、地域によっても考え方が全然違います。
平野部の広い水田地帯などでは、
畦塗りを必要としない地域もあります。
また、畦をコンクリートにして、
水漏れもせず、草刈りも省力化している地域もあります。
淡路島なんかは、コンクリート畦を多く見かけましたね。
その点、丹波のような山間の段々田んぼでは、
畦塗りをしていないと水が抜けていきますし、
地域全体で畦塗りをしてきた”これまでの慣習”があります。
畦塗りをさぼっていると、
「あそこは水をたくさん使ってる!」などと言われ、
お付き合い上もよくありません (;´・ω・)/アカンで~
大昔から何千年と続いてきた稲作ですので、
日照りが続いて、水不足になったりすることもあったでしょうし、
山から流れる貴重な水を、大切に大切に利用してきた先祖の思いが、
この畦塗り作業に表れているのだと思います。
水田文化と畑作文化
この畦塗り一つ考えてもわかるように、
山間の水田地帯では村全体で水を守る、田んぼを守るという考え方が強く、
地域付き合いが、今でも非常に強い場合が多いです。
まさに婦木農場のある春日町野村地区などは、その最たるもので、
1ヶ月に1度くらいは、溝そうじや草刈りなど、地域での共同作業があります。
地域でのつながりが深いとも言えますが、
悪い言い方をすると、人目を気にし過ぎるような雰囲気も感じます。
私はこのような「日本人の生まれ持った気質」の起源は、
この水田文化ではないかと考えています。
その点、畑作地帯では地域付き合いのスタンスが違うように感じました。
開拓精神の強い北海道にいたからかもしれませんが、
十勝で研修していた時、農家さんたちは、
自分自身にすごく誇りを持っている方が多いと思いました。
地域の付き合いはもちろんありましたが、
臆することなく、自分の意見を持っている方が多い印象を受けたのです。
水田地帯と違い、水の取り合いになることもなく、
畑も恐ろしく広いので、あまり人目を気にしない性格になるのかもしれません。
大規模経営者の方が多かったからかもしれませんが(笑)
写真は師匠の大根畑です。ほんまデカかった~( ゚Д゚)
おわりに
後半は私の個人的な偏見ダダ洩れでした、すいません。
前半で、畦塗りのことはよくわかっていただけたと思います。
今度から田んぼを見るときは、
畦がどうなっているのか、ぜひ注目してみてください!
「春眠暁を覚えず」とはよく言ったもので、
なんとなくボーっとしてしまう時期です。
今朝なんかは、うっかりウンコ💩を流し忘れて、
嫁さんに「ボーっとすんな、臭いんじゃ!」と
某テレビ番組のように怒られたところです。
いや~( *´艸`)ごめんよ~ハハハハハ(乾いた笑い)
・・・気を引き締めて、頑張っていきましょう!
そんな中でも、毎日乳を搾り、チーズ作っています。
買っていただけますと、私も牛も、大変喜びますので、
ぜひ販売サイトをご覧くださいませ✋
YouTubeも更新しています。
サンマルセランチーズを作る様子です。ぜひご覧ください!
丹波チーズの食べ方🧀〜お手軽パン編〜
「丹波チーズは買ってみたいけど、どうやって食べたらいいのかな?」
と悩める子羊たちに、食べ方をご提案するシリーズ!
早くも第二弾!
基本編を読んでない方は、ぜひこちらもお願いします(^^)/
今回は「お手軽パン編」ということで、
ホームベーカリーでのチーズの使い方と、
ブラジルのチーズパンといわれるポンデケージョ の2つをご紹介です。
どちらのレシピにも丹波チーズ工房の蔵熟成ゴーダを使っています!
ホームベーカリー
ウチのお母さんが、何故か最近ホームベーカリーにハマっていたので、
試しに蔵熟成ゴーダを入れたら、とっても美味しかったので紹介します。
材料を入れてボタンを押すだけで、美味しいパンを焼いてくれる、
とっても優秀なホームベーカリー君。皆さんはお持ちですか?
我が家にもかーなーりー古いものが1台ありまして、
一応レシピを載せますが、ホームベーカリーによって材料や分量が違いますので、
あくまで参考程度にしかなりませんが、お許しくださいませ(笑)
材料(1.5斤分)
- 水 280ml
- 強力粉 400g
- 砂糖 大さじ3
- 塩 小さじ1½
- バター 25g
- スキムミルク 大さじ1½
- 蔵熟成ゴーダチーズ 70g
- ドライイースト 専用スプーン1杯(当機付属のスプーンです)
※バターはマーガリンでもOKです。
作り方
- ゴーダチーズを1~2㎝角のサイコロ状に切る
- 材料を計量し、チーズと一緒にすべてホームベーカリーに入れる
- 「焼く」ボタン押したら待つだけ。完成!
蔵熟成ゴーダの香りとうま味で、
ジャムも何もつけずに、しっかりと味がついて、
そのままでおいしいチーズパンになりました🍞
ホームベーカリーに付属しているレシピに、
たいてい「レーズンパン」はあると思いますので、
そのレーズンをゴーダチーズに置き換えれば、
付属レシピと分量同じで作れます!試してみて( *´艸`)
ポンデケージョ
私もまったく知らない食べ物だったんですが、
クックパッドプレミアムユーザーの嫁さんが、レシピを見つけて、
サクッと1時間くらいで作ってくれたので紹介します。
正式名は「ポン・デ・ケージョ」
ブラジルではコーヒーのお供として朝食の定番になっていたり、
チェーン店もあるほど、ポピュラーなチーズパンなんだそうです。
日本のドーナツみたいな感じかな?ポンデリングとか似てるし(笑)
本来はキャッサバ粉(タピオカ粉)で作るようですが、
嫁さんは白玉粉での代用レシピを見ていたので、そちらを。
材料(12個分)
- 白玉粉 100g
- 卵 1個
- 牛乳 60g
- 蔵熟成ゴーダチーズ 50g
※ゴーダチーズはパルメザンチーズでも代用できます
作り方
- ゴーダチーズはチーズグレーター等で*1粉状にすりおろし、卵は溶きほぐしておく
- ボウルに粉チーズと白玉粉を入れて混ぜ合わせる
- 牛乳を少しずつ加えて混ぜる
- 卵も加えて、滑らかになるまで手でこねる
- ラップに包んで、冷蔵庫で30分ほど休ませる
- 12個に切り分けて丸める
- 180度に温めたオーブンで約20分焼く、完成!
蔵熟成ゴーダの優しい風味が心地よく、
表面の香ばしさも相まって、とってもおいしかったです!
外はカリカリ、中はもちもちの食感で、ついつい手が出ちゃいますよ✋
味もシンプルで、そんなにヘビーでもないので、
サクッとコーヒーブレイクにピッタリかもしれません(^^♪
砂糖やマーガリンを加えたりするレシピもあるようで、
嫁さんも「もうちょっとチーズの量増やしても良さそう」とか
「角切りで入れてみようかな」とか言ってました。
意外と簡単ですので、ポンデケージョぜひお試しください(*⁰▿⁰*)
おわりに
今回の「お手軽パン編」いかがだったでしょうか?
少しでもお役に立てれば嬉しいです。
嫁さんは、農作業も一緒に頑張ってくれていて、
ご飯も毎日作ってくれているので、ほんとに感謝してもしきれません(強調)
しかも最近は、チーズを使った料理にも挑戦してくれていて、
ちょうど今夜も、おいしそうなチーズ料理を仕込んでいました(笑)
また今度、嫁さんレシピもご紹介できればと思います、お楽しみに✋
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特に凝った編集もしていなかったのですが、
意外と良い反応をいただいているトラクターの動画です。お時間あればぜひ~(^^♪
*1:チーズグレーターとはおろし器みたいなもので、アマゾンで買えるこちらが使いやすいです
婦木農場が「ジャージー牛」を飼う5つの理由
婦木農場では、現在8頭のジャージー牛を飼っています。
時々、お客さんにも聞かれるんです。
「なんでジャージーをCOW(かう)んですか?」
・・・すいません。つい出来心で・・・
でもほんとに聞かれるんです。
そんなとき私はたいてい、
「かわいいからですよ~(^^)/」とか
「チーズに加工するためなんです~」なんて返しているんですが、
実は一言では説明できない、いろいろな理由があるんです。
じっくり読んでいただければ嬉しいです。
予備知識として、以前の記事も読んでいただければ嬉しいです。
きっかけはノンホモ低温殺菌牛乳
婦木農場は昭和12年から酪農を始めたという記録が残っています。
我が家のミルクは「ノンホモ低温殺菌牛乳」用として地元の酪農組合に出荷をしていました。
少し時代をさかのぼって、1980年代。
当時、公害問題などや食の安全安心を求める機運が高まり、
酪農組合では、神戸の消費者団体の後押しのおかげで、
全国でも先駆けとして「ノンホモ低温殺菌牛乳」を売り出しました。
ノンホモというとは、
牛乳に含まれる脂肪球を細かく砕くホモジナイズという工程を通さず、
「牛乳本来のありのままの形」を守る製法のことです。
普通、搾った牛乳を置いておくと、上にクリーム状の脂肪分が浮いてくるのですが、
一部の消費者の方からは「腐ってる」などのクレームになることもあるようです。
ホモジナイズすると、クリームが浮きにくくなるので、現在ほとんどのメーカーは必ずホモを通しています。
低温殺菌(別名パスチャライズ牛乳)とは、63度30分で殺菌する方法で、
搾りたての牛乳の自然な甘味があり、スッキリした喉越しとなります。
一般的な120度2秒などの超高温殺菌は、栄養成分は変わりませんが、
牛乳中のタンパク質やカルシウムが変性してしまい、風味も変化します。
この牛乳では良いチーズは作れません。
高度経済成長真っ只中、
当時の日本では珍しい「ノンホモ低温殺菌牛乳」を生産する有志の酪農家が集まり、
「パスミルク生産会」として消費者団体とつながりました。
もちろん婦木農場も、立ち上げメンバーになっています。
パスミルクの特異な取り組み
このパスミルク生産会は、消費者との間に、当初いくつかの取り決めがありました。
1.丹波地域の小規模酪農家であること
スケールメリットを求めて、大規模酪農家も増えてくる中、昔ながらの小さい酪農家を選んでいただきました。理由は次の項目につながります。
2.牧草などのエサを自給すること
大規模化は、否応なしに輸入飼料に依存することになります*1。
北海道と違い、広大な畑や放牧地も確保できないため、頭数の少ない酪農家であればあるほど、田畑で採れる牧草や、稲わらの確保ができ、エサの自給が可能となります。
3.丁寧に牛を飼うこと
牛の健康管理や、牛にやさしい搾乳方法の検討、乳質の改善など、毎月のように生産者の勉強会を開き、より良い牛飼いを目指した研鑽を続けていました。
4.消費者との交流をすること
年に数回、生産酪農家を消費者が訪ね、農作業を手伝ったり、一緒にご飯を食べるなどの交流をし、「生産者の顔の見える牛乳」としての信頼関係を深めていました。
その他にもいろいろあったようですが、
このように、酪農家と消費者が直接つながり、交渉し、
消費者の求めるノンホモ低温殺菌牛乳を提供するという取り組みは、
日本全国探しても、かなり珍しい取り組みであったようです。
婦木農場は、このパスミルク生産会の活動に当初から入っていたからこそ、
今でも続く牧草などのエサの自給に取り組んでくることができました。
酪農を廃業する!?
大成功に見えたパスミルク生産会の活動も、時代の変化にはついていけませんでした。
小さい酪農家は、後継者不足と生産者自身の高齢化で、年々減っていきました。
現在、ノンホモ低温殺菌牛乳は丹波乳業さんに引き継がれ、少し形を変えながら続いています。
婦木農場でも、エサの自給にも取り組んではきましたが、
飼料価格の高騰や、酪農担当であった祖父の高齢化(ケガ)により、
続けていくのがかなり厳しい状況に陥っていました(;´・ω・)
また、近年の温暖化により、
暑さに弱いホルスタイン牛は、毎年相当なダメージを受けてしまい、
元々乳成分が少ないホルスタインのミルクは、
乳質基準を下回ることも多く、罰則金(ペナルティ)が出ることもありました。
そして、それらを改善していく「資金」もありませんでした…。
ジャージー牛との出会い
そんな状況の中、21歳の私は、ご縁あって
静岡県掛川市の柴田牧場さんに研修に行きました。
ホルスタイン牛とジャージー牛を30頭ずつ飼い、
搾ったジャージーミルクは自分たちで低温殺菌し、
瓶詰めして、毎日地元のお客さんに配達する。
ソフトクリーム屋も営業し、夏場は連日大行列°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
という、とてつもなくすごい牧場さんでした。
そしてこの研修が縁で、ジャージー子牛を2頭分けていただきました。
ジャージー牛を連れて帰った時には、ただ可愛い!ってだけだったのですが、
乳搾りをするようになり、ジャージー牛の有能さに気が付きました。
乳成分が高いので、牧草などの自給飼料をたくさん与えても、
乳質基準を余裕でクリアできるのです( ゚Д゚)//
また、品種改良によって年々巨大化していたホルスタインは、
我が家の牛舎の構造が古すぎて合わなくなってきていたんですが、
ジャージー牛にはピッタリ!ちゃんと横になることができました。
持続可能な酪農を目指して
日本にジャージー牛が導入されたのは明治期で、
ホルスタインよりかなり早かったそうです。
当時はエサを輸入することなどなかったので、
家の周りの草や、米ぬかなどを食べさせていたことが想像できます。
そんな環境でも、
乳質のしっかりしたミルクを出してくれるのがジャージー牛なんですね。
「人間が食べられない草をエサに、ミルクや肉を手に入れる」
というのが本来の酪農の始まりでもあります。
輸入飼料はもちろん今でも与えていますが、
今のご時世、本当に何が起きるかわかりませんよね。
明日、突然エサの輸入が止まってしまうかもしれません。
でもそんな時にも、うちのジャージー牛たちは、
身の回りのエサをかき集めれば、何とか元気に乳を出してくれると思います。
ホルスタイン牛や大規模酪農家は、大変なことになるでしょう。
「持続可能」これが、ジャージー牛を飼う最大の理由です。
もちろん、これまでのおじいちゃんらの努力があってこその、今現在の考え方です。
写真は近年取り組んでいる飼料稲のサイレージ(WCS)というエサです。
秋ごろに刈り取った稲を、ワラも一緒にそのままラップでくるんで、
稲のお漬物を作っています。お米もワラも発酵して食べやすくなります。
かなり量産できるので、自給率改善に今後益々利用できると考えています。
今の取り組みが正解なのかは、正直私にもわかりませんが、
今後10年、20年、30年と時代が変わっても、
この丹波という地で続けていける酪農を、
これからも模索していきたいと思います。
そして、
そんな酪農のおかげで、今のチーズ作りができています🧀
丹波の酪農の魅力を未来に伝えていくための、私の新しい取り組みです!
おじいちゃんらには負けていられません!(笑)
どうぞ応援よろしくお願いします!!
YouTubeも更新しています。よかったらご覧ください!
*1:当時は特に輸入飼料も安価だったため、依存するしかありませんでした。今ではWCS(ホールクロップサイレージ)と呼ばれる飼料稲のエサを作れるようになり、大規模農家でもある程度の自給が可能になり、先進的に取り組まれている農家も増えています。
チーズは塩のとりすぎになる??驚きの健康効果!!
「チーズって塩分高いし・・・」
といってチーズを敬遠しているそこのあなた!
ちょっとだけお話を聞いてやもらえませんでしょうか?
チーズには様々な栄養成分や健康効果があるんですが、
チーズは血圧上昇を抑える効果があるという研究も発表されています!
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
チーズの塩分は高くない
まず結論から申し上げると、「チーズは塩分のとりすぎにはなりません」
こちらをご覧ください。*1
普段から私たちが食べている食パンや即席みそ汁にも、かなりの食塩が使われていることがわかります。
一回で食べるチーズはせいぜい30g程度ですので、チーズが特別に塩分が高い食品とは言えないと考えられます。
チーズの種類による塩分
チーズの種類によっても、塩分の違いがあります。
ブルーチーズやパルメザンチーズなどはゴーダチーズの2倍ほどの食塩となりますが、
これも一度にたくさん食べられるものではないので、まず問題がないと言えるでしょう。
種類 | 1食あたり(目安量) | 100gあたり | |
---|---|---|---|
ナ チ ュ ラ ル チ ー ズ |
パルメザン | 0.2(大さじ1) | 3.8 |
ゴーダ | 0.4(20g) | 2.0 | |
ブルー | 0.4(10g) | 3.8 | |
カマンベール | 0.4(20g) | 2.0 | |
クリーム | 0.1(20g) | 0.7 | |
カッテージ | 0.2(20g) | 1.0 | |
プロセスチーズ | 0.6(1切れ20g) | 2.8 |
熟成が進んだチーズなどは、塩味が強く感じられる場合があるかもしれませんが、
熟成によるうま味の濃厚さが、塩味を引き立てているためであり、
過剰に塩分が強いわけではないので、ご安心ください。
チーズは食塩がないと作れない
チーズとはそもそも、
牛乳の固形成分を取り出して、
食塩を添加することで保存性を高めた発酵食品ですので、
食塩がなくてはならないのです。
写真は当工房の蔵熟成ゴーダチーズを塩水につけている様子です。
24時間かけて塩水を浸透させ、熟成庫にて一年熟成させていくのですが、
もしこの工程を飛ばすと、チーズは悪い菌によってぐちゃぐちゃに腐ったり、
チーズの中でガスが発生して、パックリ割れてしまうと考えられます。
この塩水によって、味付けだけでなく、
悪い菌の殺菌や、ホエーの排除による品質向上につながる大切な工程です。
チーズは血圧上昇を抑える
塩分が高い…と警戒されがちなチーズですが、
ここまでお読みいただき、誤解は解いていただけましたでしょうか?
ここからは、チーズは血圧上昇を抑える効果があるというお話です。
これには、「ペプチド」がポイントとなります。
タンパク質は、たくさんのペプチドが集まったものです。
そしてペプチドは、2~10個のアミノ酸が集まったものです。
つまり タンパク質 > ペプチド > アミノ酸 ですね。
チーズの熟成が進むと、ミルクにある酵素や乳酸菌が作り出す酵素によって、
タンパク質が、ペプチドを経て、アミノ酸に分解されていきます。
その過程で「血圧上昇を抑える作用のあるペプチド(降圧ペプチド)」に変化するものが多数見つかっており、
代表的なものとして「ラクトトリペプチド」は、特定保健用食品に利用されたりもしています。
この降圧ペプチドが、腸管から分解吸収されると、
肺や動脈内皮に存在する、『血圧を上げる要因となる酵素*3』を阻害し、
血圧の上昇を抑える効果があります。*4
実際にラクトトリペプチドを利用した機能性食品も発売されています。
当工房の蔵熟成ゴーダは熟成期間も長く、
しっかり分解が進んだペプチドの宝庫なので、
血圧上昇抑制効果のあるペプチドも含まれていると考えられます。
早くおばあちゃんに食べさせないと!(笑)
最後に
チーズの塩分や健康効果について書いてきましたが、どうでしたか?
チーズの歴史を調べると、紀元前3000年までさかのぼれるといわれています。
つまり5000年前です、すごいですよね。
この5000年間、ずっと人類が作り、食べ続けてきたチーズという発酵食品が、
私たちの体に悪い影響を及ぼすとは到底考えられませんよね。
さて、チーズを食べようと思ってくださったあなた!
ピザチーズや6Pチーズもいいんですが、
もし余裕があれば、そこから一歩踏み出して、
ナチュラルチーズを選んでいただけると大変ありがたく思います。
本来発酵食品であるカマンベールチーズやゴーダチーズ、ブルーチーズなどは
ナチュラルチーズといわれ、乳酸菌が生きた状態で発酵が進んでいます。
ピザチーズなどのプロセスチーズというのは、
ナチュラルチーズを原料に加熱殺菌して固めたチーズですので、
乳酸菌などは死んでしまっています。
ナチュラルチーズとして熟成していく中で、
健康に効果のあるペプチドを作ってくれた乳酸菌たちを食べれば、
身体が喜ぶこと間違いなしですよ!(^^♪
ナチュラルチーズの味や香り、舌の上で滑らかにとろける食感を、
ぜひ多くの方に体験していただければ嬉しいです。
YouTubeも見てください!チャンネル登録も宜しくお願いします✋
*1:日本食品標準成分表2015より
*2:https://www.j-milk.jp/findnew/chapter3/0307.html より引用
*3:アンジオテンシンⅠ変換酵素
*4:https://www.asahicalpis-w.co.jp/company/press/2015/200703_02/ カルピス株式会社さんでも、研究結果として発表されています