丹波チーズ工房のブログ

江戸時代から続く農家の成長日記とチーズのある暮らし

「種苗法改正」について農家のせがれが思ったこと

5月の初め、

タレントの柴咲コウさんが反対を表明したことで注目をされている種苗法改正案

「農家の種子への権利がなくなる!」とか

「多国籍種苗会社に日本の農業が潰される!」と

恐れている方をいくつも見かけました。

 

婦木農場で自家増殖している里芋くん↓

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私も一農家として、少し前から気になってはいましたが、今回の注目を機によくよくこちらの改正案を調べてみました(๑و•̀ω•́)و

 

種苗法の一部を改正する法律改正案概要(農水省HP)

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/attach/pdf/index-38.pdf

関連情報と質問まとめ(農水省HP)

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html

 

これを踏まえたうえで、以下の記事や動画でさらに勉強しました。

たくさんありますが、気になるやつあればいくつか見てみてください。

 

この農協の記事が一番コンパクトにまとまっている感じです。

種苗法改正 生産現場への周知必要(農協)

https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/04/200415-41246.php

 これ分かりやすい品種例です

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ネットでも話題になっている育種ブドウ農家さんの声(林ぶどう研究所)

https://note.com/grapelabp/n/n53a70ed87db1

 

40分と長いですが、自家増殖の方法についての丁寧な説明がわかりやすい


【誤解】種苗法改正によって農家の自家採種が原則禁止?!

 

自然農実践者の方の遺伝的な警戒点に関心


種苗法改正『自家採種禁止?』について思うこと【タネの話】2020年5月4日

 

また、これまでの種苗法についても改めて調べてみました。

これまでの種苗法(農研機構)

http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/ncss/hogotaisaku/files/tourokukenri.pdf

「育成者権の効力は,種苗の生産行為に及ぶことから,自家増殖についても育成者権者の許諾を要することになるところ,農業者の自家増殖が従来からの慣行として広く行われてきたことに配慮し,原則として育成者権者の許諾なく,自家増殖を行うことができるとするものである。」(19ページ)

 

→自家増殖していいよーってちゃんと書いてありますね。

 

国内育成品種の海外への流出状況(農水省)

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/kentoukai/attach/pdf/3siryou-6.pdf

 

→中国であったドラえもんのパクリwとは比較にならない流出ですね…。

 

品種登録の5条件と申請方法など(品種登録HP)

http://www.hinshu2.maff.go.jp/act/faq/faq02.html

 

 

ここまで調べてみたところ

種苗法というのは、そもそも種を作る育種者を守る法律であることがよくわかります。

また、自家増殖が自由であるがために、海外流出も起こり、育種者は困っている。

今回の改正案で、登録品種の育種者権利はしっかり守れるようになるってことですね。

野菜農家の多くは、すでにF1品種を使っているので、登録品種が増えてもそんなに大きく影響は受けなさそうですね( •̀∀︎•́ )✧︎

 

私は育種家を心から尊敬しています。毎年毎年、より美味しい、より病気に強いなどさまざまな要素をもつ品種を作ってくれているからです。ちょっと値段が上がっても、きちんと農作物を作って販売するために、農家は種苗代として投資をしているのです。

 

このように、農家としては、育種者の苦労もよくよくわかりますし、大企業に忖度するわけでもなんでもなく、グローバル化の流れとして、今回の改正は正しい方向なのかなと思います。

 

 

ただ、調べている間にもう一つ、農協の記事の最後にも書いてありましたが、2年前に廃止された「種子法」という法律にぶち当たりました。

 

種子法廃止についての記事(スマートアグリ)

https://smartagri-jp.com/agriculture/156

 


三橋TV第20回【日本国民を殺す種子法廃止の正体】

 

→戦後の食糧危機の時代に、国民を飢えさせてはならん!とコメ、麦、 大豆の種子を国のお金でしっかり供給すると決めてやってきたものを、今後民間に移していくというのです。

 

廃止とともに、15の道県で条例が制定され、兵庫県なんかは、県の試験場が責任をもって種子供給と研究開発をやってくれています。長野県では、特産の伝統野菜まで県がやっているようで、頼もしい限りです。

 

でもこれはどうなんでしょう。

今は県が頑張ってくれていますが、今後移っていくとして、民間企業は売れるものを作りたいでしょうから、コストダウンのためにも品種はなるべく絞って大量生産しますよね。

南北に長い日本の各地で、毎年のように異常気象が起こり、流行りの病気や害虫が変わっていく中、重要作物であるコメや麦の画一化された作物を作っていくだけでは食糧危機リスクが高いとも考えられないでしょうか?

 

大手種苗メーカーさんがコメとか作ると、そのノウハウでもっといいものができる可能性ももちろんあります。実際にこの数十年で多くの野菜が新たに開発され、食卓を彩っています。穀物の種も市場競争させればもっとよくなるのかもしれません。農家としては、種がちゃんと確保できるなら変わっていってもいいのではとも思います。

 

と、そんななか、やっぱり種は公の財産として国が守るべき、という法律を議員立法しようと立ち上がった方もいらっしゃるようです。

 

川田議員の「在来種保全法案」について(東京新聞)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202005/CK2020051402100027.html

前半は質問コーナー。1時間25分頃から、川田議員の私案提案です。

 
【ノーカット版】「種苗法改正法」についてQ&Aセッション(一般参加)&「在来種保全・活用法案」の記者会見 出演:川田龍平(参議院議員)印鑰智哉、MC:堤未果 2020年5月13日

 

いろいろ詰め込み過ぎて、私も頭がパンクしそうなんですが、皆さんも可能な範囲で調べて、勉強してみてください。

 

大前提としてはっきりしているのは、今の日本の農業政策は、大規模化や効率化による国際競争力の強化を念頭に置いたものばかりになってきています。

 

農水省でも「強い農業」と掲げられています

 https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h28/h28_h/trend/part1/chap0/c0_1_00.html

 

農業はIT分野と違って、1年で性能が倍になるなんてことはあり得ないので、

競争だけでやっていくのは、限界が見えているのではないかと私は思います。

本気で競争し始めたら、お金にならない田んぼの草刈りなんて、あほらしくて誰もやらなくなりますよ?

それでほんとにいいのか?ってことも、ちゃんと見て考えてほしいです。

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今回のコロナショックで、過度なグローバル化による食糧安全保障みたいな話もちょっと聞くようになってきたように思います。

どうなっていくのか、引き続き注視していくしかなさそうです。

 

最後になりますが、

日本のお米や野菜、在来種などの特産品を守り、

未来に豊かな食文化を伝えるためには、

私たち農家がお客さんに喜んで買ってもらえる作物を育てて、

もっともっとお客さんに発信し続けることが大切になってくるでしょう。

みなさんもぜひ関心を持って、毎日の食生活から日本の農業を応援していただけると嬉しいです。

 

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。

 

追記5/16

国産競争力を高めるっていうのは、捉え方によっては「消費者視点」ってことなのかもしれません。お客さんが欲しいと思えば、野菜も変わるし、米も変わっていく。草刈りをしていることに価値を感じていただければ、農村風景も守られていく。それもまた自然なことなのかもしれませんね。

そんな競争の中でも、お客さんに選んでもらえるものを作り続けることが農家の仕事ですから、婦木農場にしかできないことを、これからも取り組んでいかないといけませんね。

 

 

 

 

早速宣伝なんですが(笑)

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